自分らしい演奏でコンクールに勝てるのか〜ブルース・リウ、ショパンで喜びを表現

ブルースリウ、イリヤ -ブルース・リウ

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表紙写真:YouTube:Bruce Liu on: Music, Teachers, Winning strategies and Serious relationships

↓「ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭」で

ブルースさんが「エリーゼのために」をジャズしてるの聴いてから、いったいどんな人なのか気になって気になって。今更ながらインタビューを聞きまくっています!

今どきはオンラインで簡単にコミュニケーションできるから、その数も沢山!でもはっきりいって同じような質問に答えるパターンが多いのも事実。「今何時か知らないけどもう疲れきってる〜」って感じの動画もあってさすがに「気の毒で見てられん。。」となる事もありました。

そんな中見つけたお気に入りのインタビューがいくつか有るけど、今回はその中の一つを見てみます。

ブルース・リウ インタビュー with Ilya Takser

Ilya Takserはイリヤ・タクサーさんって読むのかな?ブルースさんはダン・タイ・ソン先生に師事しているけれど、その前は2011年からモントリオール音楽院でリチャード・レイモンド先生に師事し2018年に卒業したんです。そしてこのイリヤさんもモントリオール音楽院で同じリチャード先生に習っていたそうで、二人はお友達。

かしこまったところがなく、とっても正直にお喋りしてる感じ。最初にイリヤさんが「よりシリアスな話題とそうでないの、どちらから始めたい?」と聞けば「う〜ん。シリアスなのから始めた方が、人が悪い印象を持たないかも‥」とブルースさん。そこで「大丈夫、編集してあげるから」とイリヤさん。終始フレンドリーで聞いてるこちらも楽しいし、なによりとっても勉強になります!

↓動画はイリヤさんが目次を作ってくれてます。

Daria Fedorova & Ilya Takser

  • 0:00 Greeting of classmates 
  • 1:54 – Life before and after. First morning after announced results. 
  • 5:39 – Obligations of the winner. Season plans. 
  • 6:30 – Signed the contract and disappeared for 2 months 
  • 7:25 – What new contestants should prepare for? 
  • 9:09 – Who is planning a program for Chopin Competition winners? 
  • 10:15 – Pleasing judges is a good strategy? 
  • 14:46 – Ilya is sharing his concerns about Chopin competition 
  • 17:10 – The goal is to find the best interpreter of Chopin’s music or overall piano performer? 
  • 21:25 – How close we are to the real Chopin’s intentions? 
  • 26:35 – Awkward situations and how to handle popularity 
  • 29:27 – How to handle competitions’ failures and new philosophy of the winner. 
  • 34:02 – Teachers: Richard Raymond and Dang Thai Son 
  • 39:44 – Mr. Raymond vs. Mr. Son, who is more funny
  • 41:40 – Collaboration with brands (fashion and pianos) 
  • 45:46 – Inappropriate messages from girls 
  • 46:45 – Maestro Gergiev 
  • 47:55 – Is Bruce’s heart open for serious relationships? 
  • 48:55 – Announcement of the upcoming concerts in Vancouver 
  • 51:18 – Bruce plays Tchaikovsky Concerto no. 2!!!
  • (51:57 bonus mini-lecture from Ilya)一部を表示

自分らしい演奏でコンクールに勝てるのか

このインタビューは約1時間ととっても長くて。全部聞いたけど、全部面白かった!でも全部まとめるのはムリ〜!だから私が特に興味深いな〜って思った話題、

「自分の音楽を追求して自分らしい演奏をすることで優勝できるのか。審査員に好印象を与える選曲や演奏スタイルは存在するのか。参加者はそれを考慮すべきか」

について話してる部分とその前後あたりをまとめてみようと思います。

ブルースリウ、イリヤ
YouTube:Bruce Liu on: Music, Teachers, Winning strategies and Serious relationships

イリヤ:コンクール後、ショパンインスティチュートとコンサートなどをする契約をするの?

ブルース:その通り。ただ1位だけでなく、他の賞の受賞者もコンサートの機会を与えられたりするけど。自分の場合それが2月まで続く(第18回ショパンコンクールは10月に終了)。この期間には多くの事を学んだ。自分でエージェントを探す方法もそうだし、短い期間にこれまでに無いくらい沢山の人やメディアに会った。メールは日に何百通もくるし、まるでTsunami 津波だった」

7:25 – What new contestants should prepare for?

イリヤ:それは非常にストレスがたまること?それとも気にならない程度?もっと若い参加者にとっては、このような事態に備えて準備が必要だろうか。

ブルース:自分にとってはそこまでストレスではないが、正直不安な気持ちになるのは事実。優勝した瞬間に次の3つの事を思った。

  1. 「これでもうコンクールに出る必要がない」
  2. 「17、18歳じゃなくて本当に良かった。突然課せられる多くの責任に対してとても準備ができていない」
  3. 「今のシェイプをキープしなくては、というプレッシャー」

3.については何度もE マイナー(ピアノコンチェルト1番)を弾くことになるわけだし。2年間はショパンを弾き、その後良い意味でショパンだけのピアニストというイメージが固まらないようにレパートリーはどうするのかなど、5年先のプログラムまで考えなければならない。これは1年ごとに何を勉強したいか考える学生時代とは大きく異る。

いずれにしても、今後はコンクールに出場する時のように審査員を気にして、どんな弾き方が良いのか悪いのかを考える必要がないのがいい。ただ自分の好きなフィーリングで演奏したり、メッセージを考えたりできる。これは素晴らしい事だ。

10:15 – Pleasing judges is a good strategy?

イリヤ:そこで考えなくてはならないのが「特定の曲や演奏が審査員や誰かのお気に入りになり得るのか、コンクール参加者はそれを考慮すべきなのか」ということ。これを一切しないで、ただ自分の演奏したい曲を好きなように演奏して優勝することは可能だと思う?

ブルース:ある意味黒と白。自分の場合、ショパンの弾き方が従来の型にはまった演奏ではなかったから、コンクールに参加する前から先生はその事に不安を持っていた。例えば「お手をどうぞ」→ ショパン :モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲 を選んだけど。。これまでにショパンコンクールでこれを弾いた人は居ないんじゃないかな。少なくともYouTubeが出来て、過去15年くらいは聞いたことがないと思う。

その上、僕は曲のアプローチとして沢山の喜び(Happiness)を表現しようとしている。が、この解釈は危険なこともある。多くの人はショパンに対してノスタルジック、不健康で体が弱い、愛国心と望郷の思いが強い‥というようなイメージを抱いてるから。でもこれらは僕のこれまでの人生に一つもないし自分らしくない。だから喜びを表現することはとても個人的なアプローチだと言える。

最近はメディアの影響で、あまりに多くの人が皆んな同じような演奏をしている。何か「こう有るべき」と決められたものに皆んなが考えずについて行ってる、そんな感じがしていて。だから準備の段階から強く思っていたのは、そういったものは自分をインスパイアするためだけのものと割り切り、実際の演奏では自分で考えた事を表現しようとはっきり決めていた。

二人の先生(ダン・タイ・ソンとリチャード・レイモンド)はその点とてもオープンマインドで、非常に感謝している。教えるべきことは教えてくれるが、違う考え方でも支持してくれる。何かを押し付ける事なく、僕の考え方を皆んなが最も納得できる形になるように指導してくれる。

コンクールに限らずコンサートでさえ全ての人が自分の演奏を気に入るわけではないだろう。「安全だけど面白くない演奏」をして評価される時もあればされない時もある。

コンクールの勝者が皆んな安全な演奏をするピアニストかといえばもちろんそうではない。ただ「面白くなくても、誰も嫌いにならない演奏」というのが存在するかもしれない。この事をコンクールの時に考慮する人がいるかもしれない。だからバルトークは”コンクールは馬のためのレースであってピアニストのものではない”って言ったんだろう。

(Bela Bartok は “Competitions are for horses, not artists.”「コンクールは馬のためのものであり、アーティストのためのものではない」って言った→ classic fm: 22 inspiring composer quotes) 

ただ結局は、それはコンクールの問題ではなくピアニスト本人の問題だと思う。何故ならコンクールは皆んなに与えられたチャンスだし、そこでどう弾くかは自分が決める事だから。「この弾き方なら審査員が気にいるだろう」という種類の演奏が有ると思ってる人がいるかもしれない。でもそんなもの無いかもしれない。

21:25 – How close we are to the real Chopin’s intentions?

イリヤ:我々の解釈はショパンのオリジナルの解釈を超えてしまっているのではないだろうか。今でも19世紀の伝統を続けていると思う?それとも時代が進むにつれて音楽も進歩しているだろうか。

ブルース:ショパンの時代と同様の音楽を創ろうとしても、今の生活様式すべてが200年前とはまったく異なるので変わっていくのが自然だろう。同じ音楽を同じように演奏しようとしても結局は違ったテイストのものになってしまうと思う。

今思えば。。自分は他のコンクールではショパンを弾いたことは一度もないんじゃないかな‥エチュードとか弾くけど。。それ以外のショパンは弾いたことがない。何故なら、ショパンはすごく議論を呼ぶから

ショパンの時代の音楽に近い表現をするべきかというトピックなら。。実は自分はこれを解釈に取り入れている。

パンデミックのせいで家で過ごすようになってからは、以前はあまり良さが分かっていなかった古い世代、黄金時代のピアニスト、コルト−やミケランジェリ、サンソン・フランソワなどを聴いている。彼らのフレーズやベルカント、インプロビゼーションの側面は興味深い。彼らにテクニックがなかった訳ではない。ただ重要視していなかっただけ。

29:27 – How to handle competitions’ failures and new philosophy of the winner. 

イリヤ:このトピックをクローズするために聞きたい質問があるけど。この(ショパン)コンクールだけではなく、他にも大きなコンクールに出場して、モントリオール国際音楽コンクールとルービンシュタイン国際ピアノコンクールではファイナリストになったよね。他に結果に繋がらなかったコンクールもあったと思うけど。。今回一番大きなコンクールで優勝して、これまでとは何か違ったアプローチ、哲学、日々の行いなどがあったのだろうか。

ブルース:若い時には大きなイベントが終わるたび「あれはフェアじゃない」とか「こうあるべきだ」などという不満が数日残ったし、それは普通の事だと思うけど。最終的には一番大切なのは自分自身が成長することだと分かった。不満な気持ちでプラスになることは何もない。他の人をハッピーにする理由が見つかるだけで、自分には関係ない事ばかり。

だからショパンコンクールの前から自分は完全に仏陀のようになっていた。とても穏やかな気持ちだったし、結果については全く考えなかった。2次予選‥いや1次予選から毎回荷物をまとめていつでも帰れる準備をしていて「何が起きても大丈夫」という気持ちだった。

こういった心構えなるまでにはコンクールの出場経験をしながら数年が必要だと思う。そしてそこから学んだ事の一つが「期待しない」こと。期待しないで自分のやっている事のディテールに集中すること。さもないと、このような大イベントでは簡単に他の参加者やメディアに影響されてしまう。どーやって選ぶのか知らないけどメディアが集まって他の人よりスターに見える人もいる。そこでもし本当は違うのに、トップスリーに入っているように感じてしまったら危険だ。だから自分に集中して、うわさを聞かず、どこから出たのか分からない記事は信用しないようにしていた。

そして他には。。このパンデミック以来、自分の録音を聴くようになった。

それまでは演奏がひどくて自分の録音を聴くのが大嫌いだった。弾いてる時はすごく楽しいけど、聴衆の一人として後から聴いてみると思ったのとぜんぜん違っていたりするから。だから自分の演奏を聴くようになった事が自分の方向性を正すのにすごく助けになったと思う。もしこれをしていなければ頭に描いた演奏通りにならず、自分で満足できるレベルには達していなかったと思う。

ってお話です!

ダン・タイ・ソン

ダン・タイ・ソン先生については。。

ブルース:ダンの生徒は皆んなショパンコンクールの準備をするためにショパンを習いに来ると思うけど、自分の場合は全く違った。誰も僕がショパン弾きだと思っていなかったし‥(ダンからは)ショパン以外の全てを習っていたんだけど、2年ほど前に「ショパンを習ってみようか」と思いついた。ダンの良かったところは、とても柔軟性があって何も押し付けないところ。いつでも僕にとってのベストの道が何かを考えてくれていた。

って言ってます!

まとめ

という事は。。以前は審査員のことも気にしながら演奏した時期もあったけど、経験を重ねるうちに仏陀のように悟りを開いたような気持ちになり、結果の事は気にせず自分の演奏をデリバーすることに集中するようになったらショパンコンクールで優勝した、ということでしょうか‥

音楽って何だろうと考えさせられる、すごいお話を聞いたかんじがします〜

インタビューでは解釈やコンクールの意味やあり方などについても話したりしてて面白いけど、トピックが大きすぎて結論がでなかったり、違う話題に移ってしまったりなんて事もあってなかなかまとめるのが難しい!別のインタビューなどでトピック別に深く語っている事があれば聞いてみたいな〜なんて期待してます。

それにしてもいつもマイペースな方だなって思います。コンクール前のインタビューでは(今となっては貴重なかんじがするけど)

コーンクールの準備について「一つの方法は少し距離をおくこと。人生と同じで、一つの事だけをするのではなく、バーに行ったり友人と楽しく過ごしたり。練習以外のこともする」とか

「いつもフレッシュでいること。インスピレーションや創造性を保つこと。常に新しいアイデアを持つことで同じ曲を弾いても自分が退屈しないようにすること」って言ったり。

そして「いつも朝10時か11時まで寝てるし、それでも昼寝もするから。たくさん寝るんです」だって〜!

ショパンコンクールで優勝する人は、ご飯と寝る時以外はピアノ弾いてるのかなって勝手に想像してたけど。。ぜんぜんそんなイメージじゃなかった!

↓それでもただ一人、1次、2次、3次とYesが100%だったんだから本当にスゴイ!!

ショパン審査結果1
Wikipedia

↓他の参加者の結果一覧はこちら

ショパン弾きって思われてなかったのにショパンコンクールで優勝するとか!それとも。。だからこそ優勝したのでしょうか?

いつもカッコいい演奏だなって思ってて。いつも新しいって感じがするんです。常に「フレッシュに」保とうと努力してるからかな。インスピレーション、インプロビゼーション。いろいろなキーワードが飛び出すけど、先日のエリーゼのためにジャズバージョン聴いて

そっか〜!どの演奏でもフレーズやリズム、間がジャズっぽいときあるかも。予備予選から全部聴き直しているのだけど、そんな”独特”をあちこちで感じる!バラードの3番はブルースさんっぽい選曲だなって勝手に思ってたけど、やっぱりフレーズがオシャレなところがたくさんで、これショパン?ってゆーかコレがショパンなのか!と思ってみたり。。とにかく何度聴いても飽きない!

ブルース・リウ ドゥシニキ国際ピアノ音楽祭 Duszniki International Piano Festival YouTube

その後ラベルやラモーも演奏してるブルースさんだけど、バッハやリストもカッコいい〜〜!

ドゥシニキ音楽祭で演奏したブルースさんのラジオ配信。YouTubeにアップしてくれてる方がいました。リンクがいつまで続くか分からないけど貼っておきます。アンコールでラモーも弾いてくれてる

  • J.S.Bach – French Suite No.5 in G major 00:00
  • F.Chopin – Ballade No.2 Op.38 11:47
  • F.Chopin – Ballade No.3 Op.47 19:09
  • M.Ravel – Miroirs 26:15
  • F.Liszt – Réminiscences de Don Juan, S.418 54:40
  • 4 Encores 1:12:50

これからがますます楽しみです〜

↓第18回ショパンコンクールで優勝!

↓演奏全部聴くならココから

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